「うちの会社、また今期も赤字らしい…」
「このまま働き続けて大丈夫なのか不安」
決算報告で赤字という言葉を聞くたび、胸がざわつきますよね。でも赤字だからといって、すぐに会社が潰れるわけではありません。だからこそ「今が辞めどきなのか、それともまだ様子を見るべきなのか」と悩んでしまう。
実際、中小企業の約7割が赤字経営という統計もあり、赤字=倒産ではないのです。けれど、見逃してはいけない危険サインもあります。
この記事では、赤字会社に勤めるあなたが後悔しない判断をするための基準と、具体的な行動ステップを解説していきますね。
赤字だからといって即倒産ではない
まず大前提として知っておいてほしいのは、赤字経営=即倒産ではないということです。

赤字には「会計上の赤字」と「資金繰りの赤字」がある
赤字にも種類があることをご存知でしょうか。
会計上の赤字は、決算書上で費用が収益を上回っている状態です。例えば設備投資による減価償却費が大きい場合、帳簿上は赤字でも実際の現金は十分にあるケースも。
一方、資金繰りの赤字は、実際に手元の現金が不足している状態。こちらは危険度が高く、給与の支払いや取引先への支払いが滞るリスクがあります。
つまり同じ「赤字」でも、その中身によって深刻度がまったく違うわけです。
中小企業の約6割が赤字経営という現実
国税庁のデータによると、日本の法人企業のうち約6割が赤字申告をしています(令和5年度:61.0%)。過去には約7割に達したこともあり、決して珍しいことではありません。
1. 国税庁の公式データ(最新)
令和5年度分 会社標本調査結果
URL: https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/kaishahyohon2023.pdf
発表:国税庁(令和7年4月)
欠損法人割合:61.0%(法人数295万6,717社のうち、欠損法人180万3,203社)
なぜこんなに多いのか。理由の一つは節税対策です。利益が出ると法人税がかかるため、あえて経費を多めに計上して赤字にする企業も存在します。特にオーナー企業では、役員報酬を調整することで赤字決算にするケースもあるんですね。
ですから「赤字=会社がヤバい」と単純に考えるのは早計です。
赤字でも存続できる会社の条件
赤字でも会社が潰れない条件は以下の通りです。
| 条件 | 説明 |
|---|---|
| 手元資金が豊富 | 現金や預金が十分にあれば、一時的な赤字は乗り越えられる |
| 本業が黒字 | 営業利益は黒字で、特別損失などで最終赤字になっているケース |
| 金融機関の支援 | 銀行からの融資が継続して受けられる状態 |
| オーナーの資産 | 社長個人が資金を投入できる余裕がある |
つまり「赤字」という言葉だけで判断せず、会社の実態をしっかり見極めることが大切なんです。
それでも辞めるべき赤字会社の5つの危険サイン
とはいえ、見逃してはいけない危険サインもあります。以下の兆候が見られたら、真剣に転職を検討すべきタイミングです。
① 給与・賞与の遅延や未払いが発生している
給与の支払いが遅れる、ボーナスが何期も出ない——これは最も深刻な危険信号です。
従業員への給与は法律で守られた最優先の支払い義務。それが滞るということは、資金繰りが極めて厳しい証拠です。他の支払いも滞っている可能性が高く、倒産の一歩手前と考えていい状況ですね。
特に「給与の一部だけ支払われる」「支払日が何度もずれる」といった事態が続いているなら、即座に転職活動を始めるべきでしょう。
② 優秀な社員や経営陣が次々と退職している
中堅社員や幹部クラスが立て続けに辞めていくのも要注意サインです。
特に経理責任者や役員など、会社の財務状況を知る立場の人が退職する場合、彼らは内部情報を知った上で見切りをつけている可能性があります。「船が沈む前にネズミが逃げる」という言葉の通りですね。
優秀な人材ほど市場価値が高く、転職先も見つけやすい。だからこそ早めに動くわけです。あなたも彼らに倣って、早めの決断を検討してみてはどうでしょうか。
③ 希望退職の募集や人員削減が始まった
希望退職の募集や、派遣社員・パートの大量解雇が始まったら、かなり危険な状況です。
人件費は企業にとって大きな固定費。それを削減するということは、他の方法では経営が立ち行かなくなっている証拠です。特に中小企業で希望退職を募るのは、最後の手段と考えていいでしょう。
大企業なら事業再編の一環ということもありますが、中小企業の場合は倒産のカウントダウンが始まっていると見るべきですね。
④ 3期以上連続で赤字が続いている
単年度の赤字なら一時的な要因かもしれませんが、3期以上連続の赤字は構造的な問題を抱えている証です。
金融機関も、3期連続赤字の企業には融資姿勢を厳しくします。資金調達が難しくなり、事業の立て直しもより困難になっていく。経営改善計画が示されていない、または計画があっても成果が出ていない場合は、将来性に疑問符がつきます。
あなたの会社が何期連続で赤字なのか、一度確認してみることをおすすめします。
⑤ 社内の雰囲気が悪化し情報共有が減っている
社内がどんよりしている、経営情報が伏せられるようになった——これも見逃せないサインです。
経営陣が情報を隠すようになったということは、従業員に知られたくない悪い状況があるということ。社員同士の会話が減り、上司の表情が暗く、社内に諦めムードが漂っているなら要注意。
こうした雰囲気の悪化は、組織の活力が失われつつあるサインです。あなた自身のモチベーションにも悪影響を及ぼしますから、環境を変えることを真剣に考えるべきでしょう。
辞めるか残るか?判断に迷う3つの理由
危険サインがあっても、すぐに辞める決断ができないのはなぜでしょうか。多くの人が抱える葛藤を整理してみましょう。
1. 転職活動への不安(年齢・スキル・市場価値)
「今の年齢で転職できるだろうか」
「自分のスキルで通用するのか」
こうした不安が、決断を鈍らせます。特に30代後半以降になると、年齢の壁を感じて二の足を踏んでしまいがち。
でも考えてみてください。会社が潰れてから転職活動を始めるのと、今から準備するのと、どちらが有利でしょうか。倒産企業の社員というレッテルを貼られる前に動いたほうが、確実に選択肢は広がります。
転職市場での自分の価値を知ることが、まず第一歩です。
2. 生活の安定を失う恐怖
「住宅ローンがある」
「子供の教育費が心配」
家族を養っている人にとって、収入が途絶える恐怖は計り知れませんよね。
しかし、赤字会社に残り続けることが本当に「安定」でしょうか。給与カットやボーナスカット、最悪の場合は倒産による突然の失業——こちらのリスクも考慮すべきです。
転職は確かにリスクですが、沈みゆく船に乗り続けることもまた大きなリスクなのです。
3. 会社や同僚への情や責任感
「長年お世話になった会社だから」
「一緒に頑張ってきた仲間を裏切れない」
こうした忠誠心や責任感が、あなたの足を引っ張っているかもしれません。
でも冷静に考えてください。会社はあなたの人生に責任を持ってくれるでしょうか。倒産したとき、会社はあなたの生活を守ってくれるでしょうか。
自分の人生は自分で守るしかない——これが厳しい現実です。情に流されず、冷静な判断が求められます。
後悔しない判断をするための3つの視点
では、どうやって判断すればいいのか。以下の3つの視点で整理してみましょう。
視点①:会社の経営状態を冷静に見極める
まずは客観的な情報収集が必要です。
- 決算書は公開されているか(上場企業や一部の企業)
- 経営陣の説明に具体性はあるか
- 金融機関との関係は良好か
- 主要取引先との契約状況はどうか
内部情報を持つ経理部門や役員に近い人から話を聞ければベストですが、難しい場合は外部の情報も活用しましょう。帝国データバンクなどの企業情報サービスも参考になります。
視点②:自分の市場価値と転職可能性を確認する
次に、自分自身の市場価値を知ることが重要です。
具体的には:
- 転職サイトで同業種・同職種の求人をチェック
- 転職エージェントに相談して市場価値を聞く
- スカウトサービスに登録してオファーの有無を確認
実際に求人を見てみると「意外と需要がある」と気づくことも多いです。自分のスキルや経験を客観視するいい機会になりますよ。
視点③:家族状況とリスク許容度を考慮する
最後に、個人的な状況とリスク許容度を考えます。
| 状況 | リスク許容度 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 独身・扶養家族なし | 高い | チャレンジしやすい環境。積極的に動くべき |
| 既婚・配偶者に収入あり | 中程度 | 家族と相談しながら計画的に |
| 既婚・扶養家族あり | 低い | 在職中の転職活動が必須。慎重に準備を |
あなたがどの状況にあるかで、取るべき行動も変わってきます。リスクを取れる人ほど早めに動くべきですし、リスク許容度が低い人ほど綿密な準備が必要です。
辞めると決めたら実践すべき5ステップ
辞める決断をしたら、以下のステップで着実に進めていきましょう。
ステップ①:在職中に転職活動を開始する
絶対に守ってほしいのが、在職中の転職活動です。
退職してから転職活動を始めると:
- 収入がなくなり焦りが生まれる
- ブランク期間が長引くと不利になる
- 精神的なゆとりがなくなる
時間的にはきついですが、週末や夜の時間を使って準備を進めましょう。有給休暇があれば、面接日に使うのも手です。
ステップ②:転職エージェントに複数登録する
転職エージェントは必ず2〜3社登録することをおすすめします。
理由は:
- エージェントごとに得意分野が異なる
- 担当者との相性もある
- 求人情報の幅が広がる
大手エージェント(リクルート、doda、マイナビなど)と、業界特化型エージェントを組み合わせるのがベストですね。
ステップ③:退職時期とタイミングを戦略的に決める
退職のタイミングも重要です。
ポイントは:
- 賞与支給後が理想的(もらえる場合)
- 繁忙期は避ける(引き継ぎがスムーズに)
- 転職先の入社日と調整する
ただし、給与遅延など緊急性が高い場合は、タイミングより早さを優先しましょう。
ステップ④:退職金・有給消化の権利を確認する
権利関係はしっかり確認しておいてください。
チェック項目:
- 退職金の支給条件と金額
- 有給休暇の残日数
- 社会保険の切り替え手続き
- 離職票の発行タイミング
特に赤字会社の場合、退職金の支払いが遅れる可能性もあります。就業規則を確認し、必要なら人事に問い合わせましょう。
ステップ⑤:円満退職のための準備を整える
できるだけ円満に退職することが、あなた自身のためにもなります。
準備すべきこと:
- 業務の引き継ぎ資料作成
- 後任者への丁寧な説明
- 取引先への挨拶
- 退職理由の整理(ネガティブな表現は避ける)
「赤字だから辞める」とストレートに言う必要はありません。「新しいチャレンジをしたい」など前向きな理由で伝えるほうがスムーズですよ。
残ると決めた場合にやるべきこと
「やっぱりもう少し様子を見よう」と判断した場合も、手をこまねいているだけではいけません。
スキルアップと市場価値の向上に注力する
今いる会社でスキルを磨くことを意識しましょう。
- 資格取得にチャレンジする
- 新しいプロジェクトに手を挙げる
- 業務の幅を広げる
いざ転職するときのために、履歴書に書ける実績を積んでおくことが大切です。
副業や資格取得で保険をかける
収入源を複数持つことも一つの手です。
会社が副業OKなら:
- 週末起業やフリーランス案件
- クラウドソーシングでの仕事
- 投資やブログ収益
本業以外の収入があれば、会社への依存度が下がり、精神的にも余裕が生まれます。
定期的に経営状況をチェックする
3ヶ月〜半年ごとに状況を見直すことをおすすめします。
チェックポイント:
- 赤字は改善されているか
- 社員の退職状況はどうか
- 給与・賞与の支払いは正常か
- 経営陣の発信内容に変化はあるか
状況が悪化していれば、すぐに転職活動に切り替える準備をしておきましょう。
よくある質問Q&A
Q1. 赤字何年目で辞めるべき?
A. 一概には言えないと思いますが、3期連続赤字で改善の兆しがない場合は要注意です。また、赤字の年数よりも「給与遅延」「経営陣の退職」などの具体的な危険サインがあるかどうかが重要。単年度赤字なら様子見もありですが、状況を注視し続けることが大切です。
Q2. 会社都合退職にできる?
A. 給与の未払い・遅延が続いている、大幅な賃金カットがあった場合ですね、会社都合退職として認められる可能性があります。ハローワークに相談し、証拠(給与明細、メールなど)を揃えておくことが重要です。会社都合なら失業保険の給付開始も早くなります。
Q3. 転職活動は何ヶ月前から?
A. 理想は退職の3〜6ヶ月前から始めることです。在職中の転職活動は時間がかかりますし、希望の求人がすぐ見つかるとは限りません。早めに動いておけば、焦らず選択できます。危険サインが見えたら、すぐにエージェント登録だけでもしておきましょう。
Q4. 退職金は赤字でももらえる?
A. 退職金は就業規則で定められた権利なので、会社の業績に関わらず受け取る権利があります。ただし、会社の資金繰りが悪化していると支払いが遅れる、分割払いになるケースもあります。退職前に人事部門に確認し、支払い時期や方法を明確にしておくことをおすすめします。
まとめ:自分の人生は自分で守る
会社が赤字だからといって、必ずしも辞める必要はありません。でも、見逃してはいけない危険サインがあるのも事実です。
判断のポイントをもう一度整理すると:
- 給与遅延・希望退職などの危険サインがあるか
- 会社の経営状態を客観的に把握できているか
- 自分の市場価値と転職可能性はどうか
- 家族状況とリスク許容度はどの程度か
そして何より大切なのは、自分の人生は自分で守るという覚悟です。
会社はあなたの人生に責任を持ってくれません。判断を先延ばしにして、いざ倒産となったときには選択肢が狭まっています。
「まだ大丈夫」と思っているうちに、水面下で準備を始めること。転職エージェントへの登録、求人情報のチェック、スキルの棚卸し——こうした小さな一歩が、あなたの未来を守ることにつながります。
赤字会社に勤めることは、決して恥ずかしいことではありません。でも、状況を見極めて適切なタイミングで行動する勇気を持つことが、あなた自身とあなたの大切な人を守ることになるんです。
この記事が、あなたの判断の助けになれば幸いでございます。











